フリーランス新法のポイント徹底解説!働き方改革と信頼関係の強化へ
フリーランス新法の徹底解説|働き方改革と信頼関係強化の新時代
近年、フリーランスとして働く方々の存在感が高まっており、その働き方に関する法律や制度の整備が求められています。
昨年成立し、今月2024年11月1日に、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス保護新法)(この記事ではフリーランス新法と表現します)が施行されました。
新法は、従来問題があった、、フリーランスと事業主間の契約関係と実際を改善することを目的としたもので、今後の働き方改革においても重要な役割を果たすことが期待されています。
本記事で、このフリーランス新法について詳しく見ていきましょう。
(参照):特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律 | e-Gov 法令検索
1.フリーランスとは
フリーランスとは、特定の雇用主に雇われず、個人事業主として独立して仕事を請け負う働き方を指します。
主にプロジェクト単位や契約ベースで業務を遂行し、その対価として報酬を得る形態です。
フリーランスの特徴など、一応確認しておきたい事項を、以下にメモしました。
1)フリーランスの主な特徴
・雇用関係がない
フリーランスは企業との間に雇用契約を結ばず、業務委託契約や請負契約を締結します。そのため、労働基準法や社会保険が直接適用されないケースが多いです。
・自由度の高い働き方
働く時間や場所を自分で選べる場合が多く、自分のスケジュールに合わせて業務を調整できます。
・責任とリスクの増加
業務内容や納期、報酬交渉などすべてを自己責任で行います。また、収入が不安定になるリスクも伴います。
2)フリーランスが活躍する主な分野
・クリエイティブ分野:デザイナー、ライター、フォトグラファー、動画編集者など。
・IT分野:プログラマー、Web開発者、アプリケーションエンジニアなど。
・専門サービス:コンサルタント、翻訳者、会計士、法律関連のサービス提供者など。
・物流・配達:フードデリバリーや軽貨物輸送などの運送業務。
その他、多種多様なフリーランス契約による仕事がありますが、代表的なものを挙げました。
3)フリーランスのメリットとデメリット
<メリット>
・働き方の自由:時間や場所を自分で決められるため、柔軟なライフスタイルが実現できます。
・好きな仕事を選べる:自分の得意分野や興味のある分野に特化して働くことが可能です。
・収入の可能性が広がる:高単価の案件を多く受注することで、会社員より高い収入を得ることもできます。
<デメリット>
・収入の不安定性:案件が途切れると収入がなくなるため、一定のリスクが伴います。
・自己管理が必要:納期管理や確定申告など、すべてを自分で対応する必要があります。
・社会的保障の不足:健康保険や年金など、会社員が受ける福利厚生がない場合が多いです。
4)フリーランスの現状と新法制定への働きかけ
・フリーランスの現状
フリーランスは、働き方改革やテクノロジーの進展に伴い、選択肢として広く受け入れられるようになっています。
しかし、繰り返しになりますが、柔軟な働き方を選ぶ一方で、労働契約の不明瞭さや社会保障の不足といった問題に直面していました。これにより、フリーランスの権利を守るための法整備が必要とされるようになりました。
・新法制定への動き
こうした背景を受けて、政府はフリーランス新法の制定に向けた動きを進め、2023年に新法が成立。今月の施行に至っています。
この新法は、フリーランスの労働条件や契約の透明性を向上させ、法的保護ももたらすことを目指しています。これにより、フリーランスと企業双方にとってより良い労働環境が期待されます。
2.フリーランス新法とは 、その目的・狙い
フリーランス新法は、独立して働く人々の権利を守るために制定された法律です。
1)新法の目的・狙い
新法は、フリーランスが直面する不安定な労働状況を改善するためのもので、契約に関するルールを定め、対等な立場での業務遂行を支援します。これにより、フリーランスの権利を保障し、働きやすい環境を整えることが期待されています。
2)フリーランス新法の施行日と適用範囲
フリーランス新法は、2024年11月1日から施行されています。特に注意が必要なのは、業務委託契約を結ぶ場合の適用範囲です。
新法では、一定の条件を満たすフリーランスが保護対象となりますが、全ての業務が適応されるわけではありません。
3)フリーランスの定義に関する細部と重要点
新法においてフリーランスは、受託業務を通じて報酬を得る個人事業主と定義されています。
この定義に基づくと、フリーランスとしての活動を行う際、税務や社会保険の取り扱いにおいても特有の注意が必要です。たとえば、年収が一定金額を超えると、所得税や消費税の申告義務が生じます。
・労働条件通知書の重要性
新法により、業務委託契約を結ぶ際には「労働条件通知書」の交付が義務付けられます。この通知書には、業務の内容や報酬、支払い条件などが明記されるため、フリーランスにとっては自らの権利を保護するための重要な書類となります。
・労働条件を巡るトラブル
フリーランスにおいては、報酬の未払いなどのトラブルが発生しやすい環境にあります。新法ではこのようなトラブルを未然に防ぐための仕組みが整備されていますが、実際の運用においては、事業者とフリーランスの双方が十分な理解を持つことが求められます。
3.新法制定に至った経緯・背景と新法の目的・狙い
近年、フリーランスとして働く人々が急増する中で、労働環境が不安定であることが問題視されてきました。このような背景の中で、働き方改革の一環としてフリーランス新法が制定されました。
1)フリーランス新法の成立までの道のり
フリーランス新法の成立は、近年の働き方改革の流れの中で重要な位置を占めています。日本社会におけるフリーランスの増加を受け、彼らの働きやすい環境を整える必要があるとの認識が高まってきました。
・働き方改革の背景
働き方改革は、労働環境の改善を目的として2010年代から盛んに議論されてきました。特に、労働時間の短縮や多様な働き方の推進が求められる中で、フリーランスの労働条件の整備が急務となったのです。
2)フリーランス新法の目的とメリット
フリーランス新法は、フリーランスの働き方をより安定させ、権利を守るために制定されました。この新法により、以下のようにフリーランスの地位が強化されることが期待されています。
・フリーランスの権利保護
フリーランスの権利を明確にすることで、契約の透明性を高めます。これにより、フリーランスの方々が不当な取引から保護され、安心して仕事に取り組むことができる環境が整います。
・労働環境の改善
また働き方改革の一環として、労働環境の改善にも寄与します。この法律により、報酬の適正化や労働条件の明確化が進むため、フリーランスがより良い環境で働くことができるようになります。
4.新法制定でも懸念されること
しかし、一方で、新法であっても万能ではなく、以下のように、いくつか懸念される点が存在します。
1)フリーランス新法の複雑さ
フリーランス新法は、フリーランスの働き方を見直すことを目的としていますが、その内容は複雑であるため、理解が難しいというデメリットがあります。特に、新法の条文や条件を正確に把握することが求められ、誤解や誤った適用が生じる可能性があります。
2)懸念される点
新法制定に伴い、一部の事業者がフリーランスとの契約を避ける可能性があります。また、フリーランス自身が制度を十分に理解せず、不利益を被るケースも懸念されています。 以下、他の懸念材料も挙げました。
・労働条件の不明確さ
新法に基づく労働条件が不明確な場合があり、フリーランスとして働く方々が自分の権利を主張しづらくなるリスクがあります。これにより、報酬や労働時間の交渉が困難になる可能性があります。
・不安定な収入
フリーランスとしての働き方は元々不安定ですが、新法が導入されることでさらに収入の不安定さが増す懸念があります。新法の適用により、クライアントとの契約が見直される場合、以前よりも報酬が減少する可能性も考えられます。
・競争の激化
フリーランス市場において新法の影響で競争が激化することも懸念されます。特に、法の適用を受けるクライアントがフリーランスを選ぶ際に、価格を優先する傾向が強まると、フリーランス同士の価格競争が悪化し、生活基盤が脅かされることがあります。
・法的責任の増加
新法によってフリーランスに対する法的責任が増える可能性もあります。これにより、法律的な知識や対応が求められ、特に小規模なフリーランスにとっては負担となることがあります。
5.フリーランスで働く人々が注意すべきこと
新法の施行で、フリーランスにとってのメリットは、先に述べました。
そのため、当然、フリーランスで働く人々は、新法の内容を理解し、契約時に必要な情報を確保することが大切です。
以下、今後の活動において注意すべき基本的な事項を挙げました。
・フリーランス新法の理解
フリーランス新法を理解することは非常に重要です。この法律はフリーランスとして働く人々の権利や業務環境を整備することを目的としています。具体的には、契約内容の明確化や報酬の適正化が求められます。
・契約書の確認
契約書は必ず確認し、内容を把握することが大切です。不明点があれば、事前に相談することをお勧めします。これにより、トラブルを未然に防ぐことができます。
・社会保険の加入
フリーランスは社会保険への加入も考慮するべきです。特に、健康保険や年金は将来に備えるために必要です。自分のライフスタイルに合ったプランを選びましょう。
・税金の管理
税金の管理も重要なポイントです。フリーランスは自営業として扱われるため、確定申告が必要です。経費の計上や納税スケジュールをしっかりと把握し、計画的に進めましょう。
・コミュニケーションの重要性
クライアントとの良好な関係を築くためには、適切なコミュニケーションが必要です。依頼内容や納期について丁寧に確認し、誤解を避けるよう心掛けましょう。
・ネットワークの構築
フリーランスとして成功するためには、業界内でのネットワーク構築も欠かせません。交流会や勉強会に参加し、人脈を広げていくことが大切です。
私は、こうした独立事業主に求められる要件に対応するためには、独立事業主段階から、起業化・法人化することをお薦めしています。副業段階から起業化するプロセスと重なり合いますが、健康保険・厚生年金保険の社会保険への加入、決算申告など、事業の基本的な管理業務の基盤整備を、自ずと必要とされ、取引先との関係が、より建設的に形成できると考える故です。
もちろんコストは掛かりますが、コストを適切に管理することで利益等メリットも十分見込むことができるのです。
6.フリーランスを活用する事業主などが注意すべきこと
一方、当然ですが、新法は事業者にメリットをもたらしますが、負担やリスクなどデメリットを招くことから、十分な対応・対策が必要になります。
1)事業者のメリット
事業者にとっても、この新法はメリットがあります。フリーランスとの契約が明確になることで、トラブルのリスクが低減し、信頼性の高いパートナーシップを築くことができます。
・フリーランス市場の活性化
新法の制定により、フリーランス市場が活性化し、多様なスキルを持つ人材を容易に活用できるようになります。これにより、事業者にとっても競争力の強化につながるでしょう。
2)事業者のデメリットと対策
フリーランス新法は、フリーランスを保護するための法律ですが、事業主にとっては新たな負担やリスクも伴います。以下では、事業主が直面しうるデメリットと、その対策について解説します。
・契約内容の明確化による事務作業の増加
新法では、フリーランスとの契約において「業務内容」「報酬」「支払条件」などを明確にすることが求められます。これにより、従来の簡素な契約書や口頭での合意では不十分となり、事務作業や契約管理の負担が増加する可能性があります。
その対策としては、以下が挙げられます。
⇒ テンプレートの利用: 契約書の作成に時間をかけないために、弁護士監修の契約書テンプレートを活用する。
クラウド契約管理ツールの導入: 契約書の作成・管理・電子署名を一元化できるツール(例:クラウドサイン)を導入することで効率化を図る。
・報酬未払い時の法的リスク増加
フリーランス新法では、報酬の未払いに関する規制が強化されており、報酬を適正な期日内に支払わない場合、事業者に罰則が課される可能性があります。また、報酬に関するトラブルが生じた場合、事業者が不利益を被るリスクもあります。
以下の対策を推奨します。
⇒ 支払管理の徹底: フリーランスへの支払期日を管理するシステムを導入し、支払漏れを防ぐ。
トラブル予防策: 契約段階で報酬や支払条件を明確に記載し、双方の合意を文書化する。
・フリーランス側の理解不足によるトラブル発生
新法の内容がフリーランスに十分に浸透していない場合、契約条件や業務範囲について誤解が生じ、トラブルに発展する可能性があります。たとえば、業務範囲外の作業を求めた際に拒否されるケースが増えることが考えられます。
対策としては、以下があります。
⇒ 事前説明の徹底: 契約締結時に業務範囲や契約条件を詳細に説明し、双方が同意した上で契約を締結する。
継続的な教育: フリーランスに対し、法制度や契約内容に関する教育資料を提供し、共通理解を図る。
・コスト増加による負担
新法に対応するための事務負担の増加や契約内容の精査に伴うコスト増加が懸念されます。特に、小規模事業者にとっては、このコストが収益を圧迫する可能性があります。
その対策は、以下を参考にしてください。
⇒ 経費計上の工夫: 新法対応にかかるコストを適切に経費計上することで、税負担を軽減する。
外部専門家の活用: 法務や契約に関する対応を外部専門家(弁護士、行政書士)に委託することで、効率的に対応を進める。
・フリーランス市場での競争激化
新法の影響により、他事業者もフリーランスとの契約を強化することで、人材の取り合いが発生し、希望するフリーランスの確保が難しくなる可能性があります。
⇒ 魅力的な条件の提示: 報酬や業務内容において、フリーランスにとって魅力的な条件を提示する。
信頼関係の構築: 継続的な業務依頼や適切なフィードバックを行うことで、フリーランスとの長期的なパートナーシップを築く。
・新法の未整備な部分に対するリスク
新法には未整備の部分も多く、法解釈が分かれるケースがあります。この曖昧さが原因で、契約や業務遂行において予期せぬトラブルが発生する可能性があります。
対策は、以下のように
⇒ 専門家への相談: 新法の適用や運用に不安がある場合、弁護士や社労士に相談して適切な対応を行う。
実務ガイドラインの利用: 新法に基づく政府や業界団体のガイドラインを随時確認し、最新情報を把握する。
フリーランス新法は、事業主にとって新たな機会と課題をもたらします。適切な対策を講じることで、デメリットを最小化し、フリーランスとの信頼関係を強化することが可能です。これにより、事業の発展と持続可能な労働環境の構築を目指すことができるでしょう。
まとめ
フリーランス新法は、働き方改革の一環として重要な意味を持ちます。
これを理解し、適切に対応することで、フリーランスとしての活動や、依頼する側のビジネス、双方にとっても、より良い環境が整うことに繋がるでしょう。
今後の展望に期待を寄せつつ、フリーランス自身と事業者当事者双方が、お互いの理解を深め、望ましい関係を構築し、拡充していくことができればと願っています。